参考文献紹介第14回「昭和2年当時のハム・ソーセージ製造者」

参考文献紹介第14回は昭和4年に農林省畜産局から発行された「畜産彙纂第26号本邦に於ける乳製品及肉製品」です。

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デジタルデータ

これまで第13回にわたり明治、大正時代における日本におけるソーセージの歴史を概略ながら取り上げさせていただきました。今回ではその製造量、製造者がどうなったか?というのを取り上げさせていいただきたく、まとめたのが次の表です。残念ながら大正8年から大正15年(昭和元年)についての資料はありません。農林水産省に問い合わせたのですが調査自体が行われなかったのか、それとも資料が関東大震災や戦災で焼失してしまったのかも不明のようです。

ハムについてはやはり鎌倉ハム系の事業所(冨岡商会、斎藤満太、岡部商会)の製造量が飛びぬけて多く、それに続くのが大木系(高橋清七、大木市蔵)といったところでしょうか。一方でベーコン、ソーセージについては大木系の事業所が圧倒的な生産量を誇っています。この時代ハム、ソーセージはまだまだ高価な食べ物で一般にはなかなか根付かず、主な販路は軍や船舶会社、そして南洋や中国であったようです。

市蔵氏は明治45年にハム・ソーセージの製造を学び始めてから約15年、見事にその努力、研究の成果を実らせたことの分かる文献です。

 
昭和2年における主なハム・ソーセージ製造業者
製造者名 住  所 昭和2年生産量(斤)
ハ  ム ベーコン ソーセージ
土橋多次 北海道函館市蓬菜町 13,000 30,000
カール・
レーモン
北海道函館市若松町 10,000 1,000 1,500
帝国畜産製造㈱ 千葉県千葉市寒川179 19,710 1,363
カール・
プチングハウス
東京都荏原郡荏原町1616 12,600 12,072
アウグスト・
ローマイヤ
東京都荏原郡品川町二日市178 3,000 1,500 1,500
高田定一 東京都神田区三崎町2-3 24,000 1,650
高橋清七 神奈川県横浜市井土ヶ谷888他 102,000 37,500 51,000
明治食糧㈱ 神奈川県横浜市神奈川区平沼町4-151 86,250 9,000 15,750
大木市蔵 神奈川県横浜市中区元町5-203 52,500 26,150 26,250
横浜ハム 神奈川県横浜市中区蒔田町288 3,696 427
鎌倉ハム
富岡商会
神奈川県鎌倉郡小坂村小袋谷5 375,000 26,250
斎藤満太 神奈川県鎌倉郡川上村183 225,000
岡部商会 神奈川県鎌倉郡川上村柏尾 112,500
濃美郡畜産組合 愛知県豊橋市西8-35-1 150,435
大阪豚肉㈱ 大阪市西区本田町通1-60 24,840
高橋清平 兵庫県神戸市元町通1丁目 30,000 7,500
黄光記 兵庫県神戸市栄町1丁目 22,500 1,500
鄶裕麟 兵庫県神戸市元町1丁目 14,250 450
小豆島食料品㈱ 香川県小豆郡安田村 129,390
浦岡倉松 長崎県長崎市本籠町 18,750
深堀市太郎 長崎県長崎市大浦相生町 15,000
鹿児島ハム㈱ 鹿児島県鹿児島市武町480 74,280 472
出典 昭和4年農林省畜産彙纂第26号「本邦ニ於ケル乳製品及肉製品」